東京地方裁判所 昭和32年(ワ)8948号 判決
被告関東化学株式会社が昭和三〇年一〇月二五日財団法人鵜沢精神衛生研究所に宛て金額五十万円の約束手形を振り出したことは当事者間に争がない。そうして、右手形には、財団法人鵜沢精神衛生研究所の合資会社小野電気商会に対する昭和三十年一一月一日附裏書、及び合資会社小野電気商会の原告五洋電気株式会社に対する昭和三一年一月一〇日附裏書があることが認められ、さらに原告が株式会社三菱銀行に対し取立委任裏書をして右手形を交付したこと、三菱銀行が満期に支払場所に右手形を呈示して支払を求めたが支払を拒絶されたこと、及び原告が同年二月九日右手形を回収して現にその所持人であることは当事者間に争のないところである。
被告は、本件手形の受取人である財団法人鵜沢精神衛生研究所は実在しない法人であるから、本件手形は結局受取人の記載を欠く手形と同じで、無効の手形であると主張するけれども、手形行為がその要件を具えているかどうかは、一に手形そのものについて決すべきものであるから、たとえ、被告主張のように財団法人鵜沢精神衛生研究所が実在しない法人であつても、本件手形は前記認定のとおり法定の形式的要件を充たしているものであるから、その振出は有効であり、且つ裏書の連続に欠けるところはない。
また、被告は、東京地方裁判所が、被告の会社整理及びこれに伴う保全処分の申立により、昭和三二年七月二四日被告に対し、被告は昭和三二年七月二四日以前の原因に基いて生じた金銭債務の弁済をしてはならない旨の保全処分をしたから、原告の請求に応ずることはできないと主張するけれども、たとえ右保全処分の存続中であつても、原告が本件手形の所持人として振出人である被告に対してその遡及権を行うことは、何ら差支がないものといわなければならない。
以上のとおりであるから、原告が被告に対し本件手形金及びこれに対する完済までの利息金の支払を求める本訴請求は正当であるとしてこれを認容した。